東大二次試験国語対策講義─平成27年度(2015年度)第一問の設問三~五の解き方

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お疲れ様です。横濱学院にて、東大二次試験国語対策講義(毎週金曜の20:10~21:50)を担当しております重森誠仁です。

東大

前回の講義後、私自身の休暇(友人や恩師を訪ねて九州一週間の旅)や、生徒の行事参加(三線大会や科学の甲子園)などがあり、取り組みが進んでいなかったのですが、3月6日(金)から着手した平成27年度(2015年度)の東大二次試験国語問題の第一問への取り組みが、4月10日(金)にやっと終了致しました。

今回は、残りの設問(設問三~設問五)の「解答作成の手順」を公開致します^^

問題文は以下でダウンロード可能です。

http://nyushi.nikkei.co.jp/honshi/15/t01-32p.pdf

なお、設問一と設問二の「解答作成の手順」は、下記の記事に掲載しております。

http://yokohamagakuin.ti-da.net/e7337832.html

今回も、うんうん唸りながら、解答を導き出すアルゴリズム・手順を模索致しました。本来であれば、毎回同じ手順で、同じ解き方を適用して、問題を解くべきなのですが、「解答に含めるべき重要な言葉」を特定する方法については、毎回迷いがあります。(1)何度も繰り返し登場する。(2)具体的な内容ではなく、抽象的な内容であること。(3)「~ねばならない」「~は重要である」等の強調した書き方。これら3つの点に注意すれば、「解答に含めるべき重要な言葉」がほいほい探知できるわけでは必ずしもないので、難しいところです。

まだまだ私も、発展途上です。とにもかくにも、筆者が評論文全体を通して主張したいことを、意味段落のつながりを丁寧に追って把握しながら、正確に掴み取る努力が必要なのだと思います。

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設問三 傍線部ウについて「どういうことか」と問われているので、傍線部ウを言い換える。

手順1:傍線部ウを3つのパーツに分ける。「その認められた自分らしさ」に①のマークを、「すでに生成する自分ではなく」に②のマークを、「生成する自分の残した足跡でしかない」に③のマークをする。これらの詳細が記載されている箇所を本文からさがす。

手順2:まず、①の詳細が記載された箇所をさがす。①の詳細が記載された箇所は、傍線部イの理由の一部としてマークした、第四段落5行目の「自分の自分らしさは他人によって認められる」と、同段落同行の「とりわけ意識もせずに、まさに自然に為される行為に、その人のその人らしさが紛う方なく認められる」と、第五段落1行目の「現実の自分とはあくまで働きであり、その働きは働きの受け手から判断されうるもの」などの文だと判断できるので(これらの文は、①における「認められた」や「自分らしさ」という言葉が使用されている文であり、①の理解に役立つと考えられるので)、これらの文に①のマークをする。

手順3:次に、②の詳細が記載された箇所をさがす。②の詳細が記載された箇所は、「自分の生成」という話題に関する情報が詳述されている第三段落5行目の「自分の出会ったさまざまな経験を、どのようなものとして引き受け、意味づけているかである。そして、そのような過去への姿勢を、現在の世界への姿勢として自らの行為を通じて表現するということが、働きかけるということであり、他者からの応答によってその姿勢が新たに組み直されることが、自分の生成である」と、第七段落3行目の「生成の方向性は、棒のような方向性ではなく、生成の可能性として自覚されるのである。自分なり、他人なりが抱く自分についてのイメージ、それからどれだけ自由になりうるか。どれだけこれまでの自分を否定し、逸脱できるか。この「…でない」という虚への志向性が現在生成する自分の可能性であり、方向性である。そして、これはまさに自分が生成する瞬間に、生成した自分を背景に同時に自覚されるのである」であるので、これらの文に②のマークをする。

手順4:最後に、③の詳細が記載された箇所をさがす。③の詳細が直接的に記載された箇所は、第七段落1行目の「何か自分についての漠然としたイメージが具体化することで、生成の方向性が自覚されるというのではない。というのは、ここで自覚されるのはイゼンとして生成の足跡でしかない」である。また、第五段落4行目の「自分らしさは生成の運動なのだから、固定的に捉えることはできない」という文における「固定的」も、「足跡」という言葉の理解に役立つ。固まったもの。もはや変化しないもの。定まったもの。という意味を持つ言葉を、「足跡」という言葉の言い換えとして自力で発想する。傍線部ウにおいて、「ではなく」という言葉により、「生成」と「足跡」が対比されていることからも、「足跡」を「生成」ではないもの、「生成」とは対立する意味のものとして言い換えるべきであることが読み取れる。この自力で発想した言葉に、③のマークをする。

手順5:上記①~③を統合し、解答を作成する。

解答例:他人によって認められた自分らしさは、自他が抱く自分についてのイメージを逸脱して変化していく自分の、一時的な姿でしかないということ。(65字)


設問四 傍線部エについて「どういうことか」と問われているので、傍線部エを言い換える。

手順1:傍線部エを2つのパーツに分ける。「残された足跡を辿る人間には」に①のマークを、「その足の運びの運動性が感得される」に②のマークをする。これらの詳細が記載されている箇所を本文からさがす。

手順2:まず、①の詳細が記載された箇所をさがす。①の詳細が記載された箇所は、傍線部エの次の行の「われわれがソクラテスの問答に直面するとき」であるので、この文に①のマークをする。ただし、上記内容は具体例に該当するので、抽象的な内容に必ず言い換える。その際には、自力で言葉を発想する必要がある。

手順3:次に、②の詳細が記載された箇所をさがす。②の詳細が記載された箇所は、傍線部エの前後に存在している。

傍線部エの前に関して
傍線部エ直前の「つまり」に注目。「つまり」は言い換えの合図であるので、「つまり」直前の文は、傍線部エと同じ内容となる。「つまり」直前の文を要約すると「足跡は死によって限られるが、働きはまだ生き生きと活動しており、足跡の持つ運動性は失われない」というものになる。ここから、働きと運動性という言葉が同じ意味で使用されていることが読み取れる。

傍線部エの後に関して
働き(もしくは運動性)という言葉が含まれた箇所をさがす。傍線部エ直後の「その意味で足跡は働きをもっている」と、傍線部エの次の行の「ソクラテスの力強い働きをまざまざと感じる」と、最終段落2行目の「自分の足跡は他人によって生を与えられる。われわれの働きは徹頭徹尾他人との関係において成立し、他人によって引き出される」が該当する。

これらの、傍線部エ前後の文に確認できる「働き」という言葉の詳細は、第三段落4行目に書かれている。すなわち、「重要なのは、何を忘れ、何を覚えているかである。つまり、自分の出会った様々な経験を、どのようなものとして引き受け、意味づけているかである。そして、そのような過去への姿勢を、現在の世界への姿勢として自らの行為を通じて表現するということが、働きかけるということ」という箇所がそれである。

これらの文全てに②のマークをする。ただし、これらのうち、「ソクラテスの力強い働きをまざまざと感じる」は具体例に該当するので、抽象的な内容に必ず言い換える。その際には、自力で言葉を発想する必要がある。

手順4:上記①~②を統合し、解答を作成する。

解答例:人が死後に残した業績には、世界への姿勢の表現としての働きが刻まれており、それはその業績に触れる他人によって引き出されるということ。(65字)


設問五 傍線部オについて「どういうことか」と問われている。また、「本文全体の論旨を踏まえた上で」という条件が付いている。そのため、傍線部オの言い換えを行い、これを骨格とし、これに含まれている「重要度の高い箇所」に肉付けする。

手順1:傍線部オを分かりやすく言い換えてみる。「この秘められた、可能性の自分に向かうことが、(虚への志向性としての)自分の目指す所である」という簡素な形で言い換える。これを2つのパーツに分ける。「この秘められた、可能性の自分に向かうこと」に①のマークを、「(虚への志向性としての)自分の目指す所である」に②のマークをする。これらの詳細が記載されている箇所を本文からさがす。

手順2:まず、①の詳細が記載された箇所をさがす。①における「この」は、オ直前の内容を指していると思われるので、オ直前の「自分の足跡は他人によって生を与えられる。われわれの働きは徹頭徹尾他人との関係において成立し、他人によって引き出される。そして、自分が生成することを止めてからも、その働きが可能であるとするならば、その可能性はこの現在生成している自分に含まれているはずである。そのように、自分の可能性はなかば自分に秘められている」に①のマークをする。

手順3:次に、②の詳細が記載された箇所をさがす。「虚への志向性」が手がかりとなる。これが詳述された箇所をさがす。その箇所は、第七段落3行目の「生成の方向性は、棒のような方向性ではなく、生成の可能性として自覚されるのである。自分なり、他人なりが抱く自分についてのイメージ、それからどれだけ自由になりうるか。どれだけこれまでの自分を否定し、逸脱できるか。この「…でない」という虚への志向性が現在生成する自分の可能性であり、方向性である。そして、これはまさに自分が生成する瞬間に、生成した自分を背景に同時に自覚される」であるので、この文に②のマークをする。

手順4:上記①~②を統合し、解答の骨格を作成する。
解答の骨格:働きとしての可能性が秘められている自分というものが、自他が抱く自分についてのイメージを逸脱して変化する、現在生成する自分の目指す所である。(69字)

手順5:解答の骨格に含まれている「重要度の高い言葉」に肉付けし、解答を完成させる。「働き」という言葉は重要度の高い言葉なので、この内容を充実させる。また「生成する自分」も重要度の高い言葉なので、この内容も充実させる。

「働き」については、第九~十段落や、第三段落6行目で詳述されている。すなわち、設問四の解答を、解答の骨格に取り入れる。

「生成する自分」については、第三段落6行目の「他者からの応答によってその姿勢が新たに組み直されることが、自分の生成である」で詳述されている。この部分を解答の骨格に取り入れる。

解答例:世界への姿勢の表現としての働きは、個人の業績に刻まれており、死後も他人によって認められ、引き出される。この働きの可能性を秘めた自分が、自他が抱く自分についてのイメージを他者との交流によって逸脱し変化する、現在生成する自分の目指す所である。(119字)

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