東大二次試験国語対策講義─平成27年度(2015年度)第一問の設問一~二の解き方

カテゴリー │教育研究

お疲れ様です。横濱学院にて、東大二次試験国語対策講義(毎週金曜の20:10~21:50)を担当しております重森誠仁です。




昨日の3月6日(金)の東大二次試験国語対策講義にて、平成27年度(2015年度)の東大二次試験国語問題の第一問を取り扱いました。問題文は以下でダウンロード可能です。

http://nyushi.nikkei.co.jp/honshi/15/t01-32p.pdf

比較的読み易い部類の文章でした。内容は、元気がもらえるような内容でした。「そうか。私が死んでも、世界に対する私の働きかけが刻印された私の業績に他人が触れるたびに、私は何度もよみがえることができるのか」と、永遠の命を手に入れたような気にさせる、熱い内容のものでした。

いつものように、各大手予備校による様々な解答例を比較参照しつつ、講義参加者全員で、ベストな解答の作成作業に臨みました。地を這うような、ひたすら地道で泥臭い仕方で行われるこの作業の様子をそのまま記述することは難しいので(「う~ん」と唸っている時間が本当に多いからです。また、「~ではないだろうか」「あ、違うか」という試行錯誤的、探索的な語りが多くなされるからです)、講義参加者全員のやりとりの末に確定できた「解答作成の手順」のみを掲載させていただきます。

ひとまず、設問一と設問二の「解答作成の手順」のみを公開致します。残りの設問の「解答作成の手順」は来週頃に公開致します^^

====

設問一 傍線部アについて「なぜそういえるのか」と問われているので、傍線部アの理由をさがす。

【傍線部の正確な把握】
手順1:アにおける「このような見方」が指す内容をまずは把握する(「このような」は指示語なので。指示語の指す内容はとにかく特定しておく)。

「このような見方」は、第1段落1~3行目を指しており、『「昨日机に向かっていた自分と現在机に向かっている自分」を「不変の自分」が認識している』という内容に要約できる。

そのため、「昨日机に向かっていた自分と現在机に向かっている自分」に③を、「不変の自分」に④のマークをする(これらの番号には特に意味はありません。重要ポイントを識別するためのラベルにすぎません)。

これらの文は、アの直接的な理由ではないが、直接的な理由を記述する際にこれらに触れる必要が後ほど生じるかもしれないので、それぞれに③と④のマークをしておく。

なお、第1段落1行目の「昨日の自分と現在の自分」と、第1段落4行目の「過去の自分と現在の自分とを別々のものとして立て」と、第1段落5行目の「過去の自分と現在の自分という二つの自分」にも③のマークをしておく(これらは全て内容が同じだからである。ただし、③の文に解答で触れる際には、第1段落1行目の「昨日の自分と現在の自分」は具体的すぎるので、それ以外の抽象的な内容の③を利用する。具体的な文は、抽象的な文で表現されている内容を限定してしまうため、抽象的な文が利用できるにも関わらず、具体的な文を解答で利用すると、筆者の主張の本質から外れた内容の解答を、作成してしまうことになるので)。

【傍線部の理由の把握】
手順2:まとめると、アの内容は、『「昨日机に向かっていた自分と現在机に向かっている自分」を「不変の自分」が認識しているという見方は出発点のところで誤っている』というものといえる。この理由に該当する箇所を本文からさがす。

理由に該当しそうな箇所をさがすと、第1段落5行目の「過去の自分と現在の自分という二つの自分があるのではない。あるのは、今働いている自分ただ一つである。生成しているところにしか自分はない」と、第2段落1行目の「過去の自分は、身体として意味として現在の自分のなかに統合されており」が見つかる。前者に②のマークを、後者に①のマークをする。これらは、『「昨日机に向かっていた自分と現在机に向かっている自分」を「不変の自分」が認識している』という内容と対立する内容となっているので、アの直接的な理由となる。

【解答の作成】
手順3:アの直接的な理由となる①~②を統合し、解答の骨格を作成する。

解答の骨格:過去の自分と現在の自分という二つの自分はなく、あるのは過去の自分を統合した、生成する現在の自分だけだから。(53字)

手順4:解答スペースに余裕があるので、④を有効利用し、解答文を完成させる。

アにおける「出発点のところで誤っている」という文を明確に踏まえた書き方を心掛ける。第1段落4行目の「過去の自分と現在の自分とを別々のものとして立て、それから両者の同一性を考える」から分かるように、順番として本文では、「過去の自分と現在の自分とを別々のものとして立てること」の後で、「両者の同一性(=不変の自分)」が想定されている。

したがって、解答では、「過去の自分と現在の自分とを別々のものとして立てること」がそもそも最初から(=出発点のところで)誤っていることを明確に示す。

解答例:不変の自分の前提となる、過去の自分と現在の自分という二つの自分はなく、あるのは過去の自分を統合した、生成する現在の自分だけだから。(65字)


設問二 傍線部イについて「なぜそういえるのか」と問われているので、傍線部イの理由をさがす。

【傍線部の正確な把握】
手順1:イにおける「この運動」が指す内容をまずは把握する(「この」は指示語なので)。

イ直前の文では「重要なのは、何を忘れ、何を覚えているかである。つまり、自分の出会ったさまざまな経験を、どのようなものとして引き受け、意味づけているかである。そして、そのような過去への姿勢を、現在の世界への姿勢として自らの行為を通じて表現するということが、働きかけるということであり、他者からの応答によってその姿勢が新たに組み直されることが、自分の生成である。そしてこの生成の運動において、自分の自分らしさというものも現れる」と記されており、イにおける「この運動」の内容は「自らの行為を通じて表現される世界への姿勢が他者からの応答によって再構成されるという生成の運動」と要約できる。

また、イ直後に「つまり」が存在しているので、「つまり」以降の文にも注目する。なぜなら、「つまり」は言い換えの合図であり、「つまり」以降の文はイの言い換えとなるからである(「つまり」以降の文直後の「具体的に言えば~不自然さが感じられてしまう」という文は、「つまり」以降の文である「自分の自分らしさは、自らがそうと判断すべき事柄ではないし、そうあろうと意図して実現できるものでもない」の具体例なので、参考程度に目を通しておく)。

「つまり」以降の文は、「自分の自分らしさは、自らがそうと判断すべき事柄ではないし、そうあろうと意図して実現できるものでもない」というものであるので、イは全体として、「自らの行為を通じて表現される世界への姿勢が他者からの応答によって再構成されるという生成の運動において現れる自分の自分らしさは、自分で意図して実現できるものではない」という意味であると理解できる。この文は、イの直接的な理由ではないが、解答に直接的な理由を記述する際に触れる必要が後ほど生じるかもしれないので、この文に「イ´(ダッシュ)」というマークをしておく。

【傍線部の理由の把握】
手順2:イの内容は把握できたので、イの直接的な理由に該当する箇所を本文からさがす。

第4段落5行目の「ここには」に注目。このフレーズは、話をまとめる際に使用されることがある。「ここには」以降の文は、「自分の自分らしさは他人によって認められる」というものであり、イの理由として最適といえる。そのため、この箇所に①のマークをする。

次に、「このことは」以降の文に注目。「このことは」以降の「とりわけ意識もせずに、まさに自然に為される行為に、その人のその人らしさが紛う方なく認められる」という文は、①の内容を詳細に言い換えたものになっている。この文における、①の内容を特に補足する「とりわけ意識もせずに、まさに自然になされる行為に」の箇所に、②のマークをする。

【解答の作成】
手順3:イの直接的な理由となる①~②を統合し、解答の骨格を作成する。

解答の骨格:自分の自分らしさは、無意識に為される自分の行為に、他人によって認められるものであるから。(44字)

手順4:解答スペースに余裕があるので、「イ´(ダッシュ)」を有効利用し、解答文を完成させる。

解答例:自分らしさは、自分の無意識的な行為を通じて表現される世界への姿勢が他者によって認められ、再構成される生成の運動で現れるものだから。(65字)

====


同じカテゴリー(教育研究)の記事
 新世代塾の胎動 第51回 元祖・個別指導(6)※恩師・久保田先生の思い出 (2024-11-15 07:00)
 共通テスト接近中!古文ゼロからでも4割少しはもぎ取る方法論。 (2024-11-14 09:27)
 学びの秋、9月になりました! (2024-09-01 09:09)
 究極の個別指導報告をお見せします!〜一コマ一時間で4教科ケア (2024-06-05 09:53)
 東北大は「総合型選抜」(旧AO入試)へ全面移行へ。AO(総合型選抜)入試効果で女子生徒数は30%超へ (2024-05-29 20:32)
 【朗報?!】英語が入試科目から無くなる! (2024-05-27 18:39)

※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。