義務教育は誰の義務?

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義務教育は誰の義務?



こんにちは。
“信州から不登校&公教育”の関サバ子です。

ついに、薪ストーブが毎夜稼働するようになりました。
近隣の高い山は、朝、山頂が白くなっていることも。

さて、今日は「義務教育」について書きます。



★「義務教育」と「教育を受ける権利」

義務教育といえば、沖縄在住の不登校YouTuberゆたぼん氏の動画が炎上した際にも、話題になりました。
(ゆたぼん氏の炎上は、今の日本における不登校や子どもへの視線が可視化されたという意味では、非常に興味深い現象でした。不登校はまだまだ無知と偏見が渦巻くタームであり、子どもの権利条約に批准しているはずの日本で子どもの権利が正しく理解されていないことが鮮やかに証明されていました。当事者保護者としては地獄絵図ですがね)

その時に、実に多くの人が義務教育の意味を取り違えているのが、非常に印象的でした。

義務教育の「義務」は、誰の義務でしょうか?

子どもではありません。
大人の義務です。
子どもにあるのは「教育を受ける権利」であり、「教育を受ける義務」ではありません。
その子どもの親権者や養育者である大人を中心として、大人が負うべき義務として規定されています。

まあ、大人からすると子どもの義務にしちゃったほうが便利ですよね、いろいろ。
「義務教育なんだから学校行きなさい」って、子どもに無理強いできますからね。
(学ぶって本来は誰でも自然にやってることで、何より楽しいことであるはずなんですが、無理強いされちゃう状況って何なんでしょうね)



★義務教育を受けさせないとどうなるのか?

では、「大人の義務」について考えてみましょう。
これを「就学義務」と呼び、怠ると「就学義務不履行」となります。

しかし、就学義務不履行を認定するのは、非常に難しいのです。

中央教育審議会 初等中等教育分科会(第40回)議事録・配付資料
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/siryo/06070415/002.htm

この資料の「2.就学義務不履行への対応の在り方」を見てみましょう。


・正当な事由があるから、学校に通わせることを免除するというようなことも必要。
・虐待等によって学校に行かせないというのは、明らかに就学義務違反。それについては、通知で明確にし、校長や教育委員会は毅然と対応すべき。
・「一定の要件」の内容は非常に難しい問題であり、慎重に検討すべき。
・バカロレアなど世界に通用するカリキュラムに従ったインターナショナルスクールを我が国で認めないというのは、国際社会ではおかしい。結局教育のアウトカムをどう見るかということであり、教育内容をチェックするという国の姿勢はもつべき。



就学義務不履行は、有識者の間でも見解が分かれる非常にセンシティブな案件ということがよく分かります。

法律により、一応は保護者に小学校や中学校、もしくはそれに相当する学校に通わせるようにということは明記されています。


学校教育法(抄)

第22条 保護者(子女に対して親権を行う者、親権を行う者のないときは、未成年後見人をいう。以下同じ。)は、子女の満6才に達した日の翌日以降における最初の学年の初めから、満12才に達した日の属する学年の終わりまで、これを小学校又は盲学校、聾学校若しくは養護学校の小学部に就学させる義務を負う。ただし、子女が、満12歳に達した日の属する学年の終わりまでに小学校又は盲学校、聾学校若しくは養護学校の小学部の課程を修了しないときは、満15歳に達した日の属する学年の終わり(それまでの間において当該教育を修了したときは、その修了した日の属する学年の終わり)までとする。
2 前項の義務履行の督促その他義務に関し必要な事項は、政令でこれを定める。

第23条 前条の規定によって、保護者が就学させなければならない子女(以下学齢児童と称する。)で、病弱、発育不完全その他やむを得ない事由のため、就学困難と認められる者の保護者の対しては、市町村の教育委員会は、文部科学大臣の定める規程により、前条第1項に規定する義務を猶予又は免除することができる。

第39条 保護者は、子女が小学校又は盲学校、聾学校若しくは養護学校の小学部の課程を修了した日の翌日以後における最初の学年の初めから、満15才に達した日の属する学年の終わりまで、これを、中学校、中等教育学校の前期課程又は盲学校、聾学校若しくは養護学校の中学部に就学させる義務を負う。
2 前項の規定によって保護者が就学させなければならない子女は、これを学齢生徒と称する。

第91条 第22条第1項又は第39条第1項の規定による義務履行の督促を受け、なお履行しない者は、これを10万円以下の罰金に処する。

現行の就学義務履行の督促の仕組み - 文部科学省
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/siryo/06070415/003.htm



★行きつく先は教育観の相違?

とはいえ、現実には義務教育期間で不登校の子どもたちは約13万人もいるわけで(しかも年々増加中)、上記のような学校以外の学びの場や形態を認めないとしてしまうと、学習権の侵害になってしまう恐れが出てきます。

権利を制限するには、合理的な理由が必要です。
「フリースクールやホームスクーリングじゃダメだ!」と言い切るための合理的な理由をこしらえるのは、かなり無理があるでしょう。
独裁国家であれば、これしか認めないと言い切ることもできるでしょうが、あいにく日本は独裁国家ではありません。

アウトカムが大事だということであれば、中卒認定(中学校卒業程度認定試験)や高認(高等学校卒業程度認定試験)が指標としてすでに用意されています。
「いや、そもそもそういった内容を10代のうちに習得しなければならない道理はない。一生かけて、自分が必要だと思った時に身につければいいじゃないか」という考え方もあるでしょう。

世界を見渡しても、いろんな教育の形態があります。



★尊重すべきは「当事者(子ども)の意思」

実際に就学義務不履行が認められたケースとしては、「子どもの意思に反して、親が子どもを学校に行かせず芸能活動に従事させていた」という例があるようです。

当事者である子どもの意思が重要なポイントですね。
よほど特殊なケースを除いては、大人が「子どもの言うことだから当てにできない」「親に洗脳されているに違いない」と決めてかかってしまうと、子どもに人格がないことになってしまいます。
子どもの意思を尊重するという意味では、むしろ大人が試される場面かもしれません。

いずれにしても、子どもを学校に通わせていないことが即、就学義務不履行とはなりません。

義務教育をちょっと掘ってみるだけでも、いろいろ見えてきます。
「そもそも教育って何よ?」という疑問が浮かんだ方もいらっしゃるかもしれません。

そのあたりはまた別稿に譲りたいと思います。


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